クリエイション・レーベル

レーベルの主宰者アラン・マッギーによって…

まだ“インディーズ”という言葉もなかった1983年、オリジナルパンクを聴きながら育ったひとりの青年が、周囲の同世代バンドのレコードを出そうと思い立つ。志だけで始まった個人レーベル・クリエイションは、英国の片隅から、いつしか全米大ヒットを放つまでになる。

80〜90年代を通じて最も成功し、影響力を持ったインディーレーベル"クリエイション"

ジーザス&メリーチェイン、プライマル・スクリームマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ライド、ティーンエイジ・ファンクラブ、そしてオアシスと数多くの有名アーティストを擁し、音楽界に多大な影響を与えることになるクリエイション・レーベル。

その始まりは、故郷のグラスゴーからロンドンにやってきたアラン・マッギーが、友人のジョー・フォスター、エド・ボールらと共に、小さなインディーレーベルをスタートしたのは83年。アランは銀行から1,000ポンドの融資を得て1984年に自身のレーベル"クリエイション"を設立し、すべて手作業で運営をする中、最初にヒットとなったのが、先月に再結成を果たしたジーザス&メリーチェインのファーストシングル“Upside Down”だった。


The Jesus and Mary Chain - Upside Down

http://www.myspace.com/thejesusampmarychain


その後、レーベルは80年代を通じてプライマル・スクリーム(ボビー・ギレスビーとマッギーは学生時代からの親友)、ハウス・オブ・ラブ、パステルズなど良質なインディーポップバンドをリリース。そしてレーベルが大きく認知されることとなったのが、91年に発売された3枚のアルバム、インディーロックとダンスミュージックの融合を果たしたプライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』、シューゲイザームーブメントを決定づけたマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』、そしてギター・ポップの金字塔ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』を連発し、この小さなレーベルが世界を驚かすことになる。


Primal Scream - Swastika Eyes

アルバム『スクリーマデリカ』より

スクリーマデリカ

スクリーマデリカ


My Bloody Valentine - Soon

アルバム『ラヴレス』より
http://www.myspace.com/feedmewithyourkiss

ラヴレス

ラヴレス


Teenage Fanclub - What You Do To Me

アルバム『バンドワゴネスク』より
http://www.myspace.com/theteenagefanclub

バンドワゴネスク

バンドワゴネスク

90年代初期〜中期


時代が前述のシューゲイザーや、マンチェスタームーブメントなどでインディーロック全盛だったこともあり、レーベルは、ライド、ヴェルヴェット・クラッシュ、ブー・ラドリーズ、スローダイブ、BMXバンディッツなど勢いに乗ったリリースを続ける。しかしレーベルが一番の成功を収めたのは、現在でも世界最高のロックバンドのひとつ、ギャラガー兄弟率いるオアシスに他ならない。当時全く無名だった彼らを、マッギーはライブを見ただけで、即契約。94年にデビューアルバム『ディフィニトリー・メイビー(邦題:オアシス)』をリリース。そのアルバムから記念すべきデビューシングル“Supersonic”をライブ映像でご紹介!


Oasis - Supersonic

http://www.myspace.com/oasis

オアシス(紙ジャケット仕様)

オアシス(紙ジャケット仕様)


以降もレーベルは前述のバンドの新作や、スーパー・ファリー・アニマルズなどの新人バンドをリリースしていくが、1990年代後半に経営が悪化、資本提携していたソニーとの関係も悪くなり、またマッギー本人のドラッグ問題などで、求心力を失ってゆく。メジャー化してしまったレーベルに失望したマッギーは99年にクリエイション離脱宣言をし、翌2000年、奇しくもアランの友人であり続けたボビー、プライマル・スクリームの『エクスターミネータ』発売を最後に、レーベルは15年以上に及ぶその歴史に幕をおろすことになる。なおプライマルは、ボビー・ギレスピー、アンドリュー・イネス、ロバート・ヤング、マーティン・ダフィーという4人に、97年の5thアルバム『バニシング・ポイント』からマニ (ex.ストーン・ローゼズ)が、00年の6thアルバム『エクスターミネーター』からケヴィン・シールズ (マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)が加わり、レーベル閉鎖後も最強のパンク・オーケストラとして活躍中。


Primal Scream - Country Girl

http://www.myspace.com/primalscream


マッギーは、その後自身の新レーベル、ポップトーンズを立ち上げ、コズミック・ラフ・ライダーズ、ザ・ハイヴズなどのバンドをリリース。またクラブイベントも主催するなど、今日まで相変わらず精力的な活動をみせてくれているが、先日の情報ではマッギー曰く「僕は自身のレーベル、ポップトーンズを縮小しようとしている。なぜならもうレコードレーベルを持つという必要性を感じないんだ。バンドは自分たちで将来を目指すべきだよ。それを助けてくれる音楽を愛する人たちはたくさんいるはずさ」とし、自身のレーベルを去る意向を示しているもよう。

残念ながらマッギーのレーベルはなくなってしまいそうだが、彼らと所属していたバンド、そして発売されたアルバムが、当時そして今もシーンに強く影響を与えていることは、間違いない。彼らの詳しい歴史については、書籍『クリエイション・レコーズ物語』に詳しく載っているので、興味を持たれた方は読んでみてください。

クリエイション・レコーズ物語

クリエイション・レコーズ物語