2001年宇宙の旅:全解説


銀座で公開中に行ってきました。

スクリーンで久しぶりに見た"2001: A Space Odyssey”は、まさにエーテル的世界で言葉にすると陳腐なのだけど、見終わった感激を残しておきたいので敢えて書きますが、ネタバレどころの騒ぎじゃないので、真相を知りたくなければ見るのを控えてください。

ちなみに「ビデオで見た人は感想を語るな。」キューブリック監督談
なので、いままで感想を語りませんでしたが(笑)
http://www.kubrick2001.com/ 
↑おもしろいフラッシュ・シュミレーション・サイトを見つけたのでここで勉強もできます。

1. 第1のモノリス(地球)

人類が出現する歴史以前の400万年前のアフリカから始まる。

ここでは猿人が人類の進化へ向かうことを暗示するシークエンス。
モノリスに触った類人猿が骨を武器にする事を覚え、ボスとおぼしき猿の放った骨が宇宙空間を飛ぶスターシップに変貌したことで、人類の進化の影に何か外的な力が働いたことを暗に提示する第一章はお見事。
しかし、この猿人たちを演じた役者さんは辛かっただろうなぁ。こんな報われない役も人類史上初なのでは(笑)
モノリス出現時のリゲッティーの音楽最高!
モノリスに知恵を与えられた草食だった類人猿は、まず手近の骨を砕き、最初に獲物となる動物を襲い肉食へ、そして対立するグループの首領を殺す。これは、人類の進化する上においての数々の道具を使った殺戮の歴史を暗に皮肉っているのでは…。権力への警鐘のような気もするし、未来におけるなんらかの伏線とも考えられる。

第1のモノリスは、こうして400万年前に地球上に設置完了。
モノリス(神?)により猿から人類に進化)

2. 第2のモノリス(月)

猿の放り投げた骨が、そのまま宇宙空間を飛び、スターシップに変貌。

最初の宇宙。この映画を象徴する重要シーン。道具としての骨から宇宙船へと
音がSpiritualizedの「Shine A Light」差し替えられているのですがこれも気持ちいいです。
当たり前の説明ですが、これ全部セットです。凄いです…。宇宙船に萌えww

ジャンプカットで400万年後の現代へ
科学(道具)が進歩し、人類は月に到達…

フロイド博士が月へと向かい、彼はその途中に乗り換えのために宇宙ステーションに行く。彼はそこでロシア人の博士から、月での伝染病の噂等を質問され、またTMA−1とは何かと質問される。しかしフロイドは知らないと嘘をつく。その後、彼は月に着いた。そこでその事実がわかる。月でモノリスが発見されたことだった。モノリスは強力な磁力を持ち、人々はこれをTMA−1と名づけた。

オリヴィエ・ムルグがデザインしたインテリアが美しい。
ちなみにこの宇宙ステーションのシーンでフロイド博士が自宅に宇宙電話をかける場面があるが、ここに登場する娘はキューブリックの実の娘さんで、とても可愛いです。

モノリスが埋められたのは、300万年前だった。つまり、これは
300万年前に、知的生命体が宇宙に行ってたことを表すのだ.。


フロイド達はモノリスが発見された場所を発見。
太陽光を浴びたモノリスは突然、突き刺ぬけるような(モノリスの絶叫?)電子音を放つ。

そして何か奇妙な放射線が太陽系を通り抜け木星へ向かう。

3. 2001年宇宙の旅へ/ボーマン vs HAL

完全無欠のHal(ハル)のシークエンス


ボーマンを船長とする、精子をかたどったディスカバリー号は調査のために、木星に向かう。
乗組員は5人。その内の3人は木星の到着調査まで必要ないので人工的に眠らされていた。もう一人はフランク。

そして6人目のメンバーが人類史上最強のコンピューター HAL 9000。


完璧なHAL の制御のおかげで快適な宇宙の旅を続けていたが、突然 HAL がユニットが壊れると予言。スペースポッド(船外小型宇宙船)に乗ってユニットを交換し故障箇所を調査するがどこも故障など見当たらない。

この事によって、完璧と思われていた HAL をボーマンとフランクは疑い始めそしてその原因を突き止めるためにフランクがポッドで今度は交換前のユニットを戻す。

しかし HAL の陰謀によってフランクは宇宙の闇に消えてゆく。

その後、ボーマン以外の眠っている3人はHALによって生命維持装置を外されあっけなく死んでゆく。
ここからHALとボーマンの戦いが始まる。

ボーマンはHALのメモリーを手で一つずつ抜き取り、ついにHALの思考回路を停止する。

感情を持ち、命乞いをするHAL。「デイブ、怖いよ。意識がなくなるよ。怖いよデイブ…」最後は産まれたときに覚えた歌を歌って死んでゆく。

3. 第3のモノリス木星

手動で木星の軌道上に到達したボーマンは、そこでようやく地球から真の目的が(モノリスが発した信号が木星に向かっていた)なんだったかをを知らされる。

そのモノリスの探索こそが真の目的であった。
それまでのHALとの交戦シーンから一転し、以降24分間セリフが一つもないという映画のクライマックスに突入する。

SPACE ODYSSEY : TRIP

そのシーンではこの音楽が鳴り続ける。



そこには月のモノリスの何十倍も大きいビルのようなモノリスが浮かんでいた。ボーマンはそれに接近しようとする…。
木星と無限の彼方で、ディスカバリー号モノリスに導かれ、スターゲートを通過する。


そしてついに木星に到達するボーマン。リゲッティの音楽がここでも効果的に延々と流れ続けます。


ようやく人類史上の到達点に…。

そこはキューブリックの美意識が凝縮したそれは、新人類(神?)が人類のために与えた部屋だった。
年老いたボーマン船長とモノリス


人類として最良の個体として神の意志により送られてきたボーマンは、その部屋で急速に年を取る。


そしてスターチャイルドとして生まれ変わり、滅亡寸前の地球へ……。





2001: A space odyssey - Ending

何度見ててもわからなかったこの最後のシーンの意味がようやくわかりました!
3:30過ぎからのボーマンが神の部屋で食事を取るシーンですが、なぜグラスを割りそれを見つめるのか。
その後に死を暗示するベッドで寝そべる彼とモノリス出現からスターチャイルドへと生まれ変わるこの謎を!!

ヒント:グラス=道具。道具=進化の証。それが割れ壊れると言うことは、、、。あー、話したい(笑)


再び「ツアラストラはこう語った」の音楽。

そしてエンディング。



あえて結末の真相は語りません。
それは見た人それぞれの感じ方があるのだろうし、そうした違った見方を知りたいと思うので。
そこにこの映画の真実が隠されているのです。

ただこれだけは言えるでしょう。

この映画は徹底した科学的な裏付けのもとで作られ、「神とは何か?」という人類共通の疑問に対するひとつの解答なのだと。

キューブリック監督は、こう言う。

「この映画の主題は、”神”という概念だ。ただし、これまでのような神ではなく、科学的な定義による神なのだ。宇宙の知的存在、生物的進化の最先端としての神である」

「この映画はメッセージではない。言葉に置き換えることのできない、2時間19分のフィルムの体験なのだ。私は(原作を)ビジュアルな体験としてクリエートしたかった。観客の意識の底深く訴えかけるような・・・音楽がそうするような、濃密な主観的体験をめざした」
そしてキューブリックは、当初の説明のためのナレーションを全て排除し、音楽のように観客の主観に作品を委ねたのだ。

 しかしけっしてこの映画、わかりにくくはないはずです。是非一度ご覧下さい。そして、見たことのある方も是非もう一度。できれば映画館で。(多分またどこかの映画館でやると思うので…。)


そして最後に。

この映画の音楽にもたくさんの謎が隠されています。それを見つけるのもとても楽しい作業なので今度はそのことにも機会があれば言及してみたいと思っています。