聴覚で感じて欲しい ”偉大な現代音楽家たち”

 1900年代初頭にかけて、ウィーンで活躍したアントン・ヴェーベルンやアルノルト・シェーンベルク、アルバン・ベルクによるミニマル・ミュージックの誕生とも言える新ウィーン楽派から始まり、40年代からはジョン・ケージの偶然性の音楽、そして第二次大戦直後の50年代前後からは一気に加速し、ピエール・ブーレーズのトータル・セリエリズム、 クセナキスのミュージック・ストカスティック、ベンデレッキ、リゲティのトーン・クラスター、 ブスール、ベーリオ、そしてシュトックハウゼンなど代表的な現代音楽家が現れる。
 ちなみに現代の電子音楽には必須の機材の元祖で、電子工学博士であるロバート・モーグが開発した「アナログシンセサイザー」が公に発表されたのは1964年。その遥か昔から、この方々はこんなもの凄い音楽を生み出していたのです。


 まずは、熱狂的な信者が多い、カールハインツ・シュトックハウゼン

Karlheinz Stockhausen - Kontakte


 詳しい説明はいらないだろう、言わずと知れたドイツで 1928年生まれたカリスマ的な現代音楽の作曲家。50年以上前からこんな音楽作ってるとは、恐るべし。惜しくも今年亡くなってしまったが、「シュトックハウゼン講習会」等で数多くの作曲家を育てた現代音楽最大級の功労者でもある。



【偶然性の音楽】
 偶然性の音楽とは作曲家が楽譜に音高、リズムなどをはじめとする音楽の構成要素を正確に記入せずに、演奏者の任意な解釈や即興にまかせ、奏者の自由な創造性にもとづく1回限りの音現象を音楽として取り入れたものを言います。
 また、楽音のみならず噪音も使用され、図形楽譜の形態をとることも多いのです。1音1音を投銭によって決めたケージのピアノ曲「ミュージック・オヴ・チェンジズ」(1951)や12台のラジオを易の方法によって24人で混ぜ合わす「イマジナリー・ランドスケープNo.4」(1951)が先駆となり、シュトックハウゼン、ブレーズ、ベーリオ、リゲティ、ペンデレツキらに様々な形で用いられ、現代音楽に広範囲にわたる影響を与えました。

John Cage - Music of Changes


ジョン・ケージの音楽は、チャンスオペレーションの音楽、不確定性の音楽とも呼ばれています。1912年ロサンゼルス生まれ。



【セリー音楽】
 セリー音楽はセリー(列)によって構成された音楽のことをいいます。シェーンベルクの十二音技法において音高に適用された音列による構成原理を音高以外の音の属性、音価・強度・アタック(音色)などにもあてはめて、それらのパラーメータを列化して組織づけたもののことです。ヴェーベルンの後期の作品やメシアンの「音価と強度のモード」(1949)が契機になり、1952年にブレーズの「2台のピアノの為のストリュクテュール1」で初めて用いられました。セリーによる制御が全面的におこなわれた音楽は、とくに「全面的セリー音楽」「セリー・アンテグラル」「トータル・オーガナイズド・ミュージック」などと呼ばれています。

Pierre Boulez - Ionisation - Boulez, Ensemble InterContemporain


 ピエール・ブーレーズは1925年フランス生まれの前衛作曲家。ウィーン・フィルベルリン・フィル等のオーケストラを指揮した巨匠的マエストロです。



電子音楽
 第二次世界大戦後西ドイツでマイアー=エプラー、アイメルトらを中心として始められた新しい音楽の分野で、従来の音楽がすべて人声や楽器の音を素材としていたのに反し、電子音楽は発振器から作り出された音を素材とし、テープレコーダなどの利用によって構成される。したがって、演奏者を必要としないこともこの方法の大きな特色である。



【ミュージック・ストカスティック】
 ミュージック・ストカスティックとは、クセナキスが統計理論を用いた自身の音楽につけた名称。そこでは音響の形態や運動が関係する諸パラメータの統計理論に基づく数学計算によって決定される。すなわち音と音との結びつきの可能性や音の変化の分布を推計学的に計算しているのである。「61人の管弦楽の為のメタスタシス」(1954)がこの技法によう最初の作品であり、1962年の弦楽四重奏曲「ST/4」以降には計算にコンピュータが導入されている。

Iannis Xenakis - Psappha


 ヤニス・クセナキスは、1922年ルーマニア生まれのギリシャ系フランス人で現代音楽作曲家だが、あのコルビュジエの下で働き、建築家として1958年のブリュッセル万国博覧会でフィリップス館を建設した変わり種。"Psappha"は彼の代表的作品だが、この演奏はメキシコ人パーカッション奏者、Augusto Moralez。




【トーン・クラスター】
 トーン・クラスターとはある音程内を短2度あるいはそれよりも狭い音程の多量の音で埋めつくしたときに生ずる密集音塊をいう。1950年代の後半に電子音楽における音響のグリッサンドや偶然性の音楽の影響を受けてあらわれたと考えられる。この手法はペンデレツキの「弦楽器と打楽器の為のアナクラシス」(1960)、「52の弦楽器のための広島の犠牲への哀歌」(1960)、リゲティ管弦楽と2台のピアノの為のアトモスフェール」(1961)、「オルガンのためのヴォルミーナ」(1961-62)とかが代表例。

Gyorgy Sandor Ligeti


 1923年ルーマニア出身のハンガリー人、ジェルジ・リゲティはその代表的な電子音楽家。トーン・クラスターと言われる概念を確立した人。この音楽は映画『2001年宇宙の旅』で印象的で重要なシーンに使われていた。

Krzysztof Penderecki "De Natura Sonoris No. 2"


 クシシュトフ・ペンデレツキは、1933年生まれのポーランドの作曲家で指揮者。オーケストラを用いたトーンクラスターに大きな特徴があり、キューブリックの映画『シャイニング』や『広島の犠牲者に捧げる哀歌』で知られている。
 最近だと、世界的なチェリストムスティスラフ・ロストロポーヴィチの80歳記念ドキュメンタリーで、アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新映画『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』ではあの小澤征爾とともに出演してました!!オペラの女王、ヴィシネフスカヤとロストロポーヴィチはロシアを代表する音楽家夫婦。やばい、話が脱線してきた。w



【ミュージック・コンクレート】
 1948年フランスの作曲家ピエール・シェッフェルが音楽表現の新しい手段として創始した方法。楽音ばかりでなく、外界のあらゆる音を材料に用い、テープレコーダの機械操作によって構成される。P・アンリ、ブレーズらにより推進された。

Pierre Henri Marie Schaeffer - Psyche Rock


 ピエール・マリー・シェフェールは1910年にフランスで生まれた現代音楽の作曲家だが、当時はさきに上げたがシンセサイザーがない時代においてテープレコーダの切り貼りで、現代のクラブミュージックと同等かそれ以上の音楽を創作してたのは驚異的と言わざるを得ない。ピエール・アンリやブレーズとともに電子音楽の礎となるミュジック・コンクレートの創始者である。



【ライブ・エレクトロニック・ミュージック】
 ライブ・エレクトロニック・ミュージックとは実際の演奏の最中に電子音がつくられ操作されていく生演奏の電子音楽。楽器による演奏音を変調、変形してテープにとって実際の演奏音と重複させる方法などがあり、偶然性の音楽の影響をうけてあらわれ、1回限りの演奏の価値を見なおす意味をもちます。ケージの「カートリッジ・ミュージック」(1960)や「増幅器つきの玩具ピアノのための音楽」(1960)がその最初の例とされている。


 最後は、やはり有名なこの曲で

John Cage "4'33"


 この一番有名であろう曲『4分33秒』は4分33秒間演奏者が「何もしない」沈黙の音楽。これで現代音楽界にケージ・ショックと呼ばれる大きな波紋を巻き起こした、20世紀最大?の前衛音楽作曲家。プリペアド・ピアノの開発者で、キノコの研究家でも有名で博士号も持つ。
 また彼は音楽の師であるシェーンベルグに弟子入りするとき「一生を音楽に捧げる気があるか」と問われた。ケージは「はい」と答え「それなら、私は壁に頭を打ち続けることに一生を捧げます」と言ったそうな。
 余談ですが、生前の彼の生活は猛烈に貧しく、50歳過ぎでも幼稚園児の送り迎えのアルバイトをしていたそうだが、彼はいつもニコニコと笑っており「ケージ・スマイル」と後年呼ばれ親しまれたそうです。←wikからネタ拾ったけど、いい話だ!